深津絵里「演技とは何か考えさせられた」

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『ウォーターボーイズ』(2001年)、『スウィングガールズ』(2004年)などを手掛けてきた矢口史靖監督によるオリジナル脚本作『サバイバルファミリー』がまもなく公開される。ある日突然、地球上から電気が消えてしまい、東京で暮らす平凡な一家・鈴木家が予期せぬサバイバル生活を余儀なくされるという、新感覚のディザスタームービーだ。主人公のダメ親父・鈴木義之には名バイプレイヤー・小日向文世、その妻・光恵には日本を代表する女優・深津絵里がスタンバイ。キャンペーンで大阪を訪れた深津に話を訊いた。

写真/渡邉一生

「字面だけではない、その先を目指していた」(深津絵里)

──矢口監督は2001年のドラマ(学校の怪談『怪猫伝説』)以来の共演となりますが、深津さんにとって監督のイメージは、どういう感じですか?

矢口監督の『裸足のピクニック』(1993年)をたまたま自宅で観ていて、この監督とお仕事してみたいなぁと思っていたとき、ちょうどドラマのお話をいただいたんですね。とっても楽しい撮影で、演出もホントに面白くて。で、クランクアップのときに監督が「次は映画でお会いしましょうね」と声を掛けてくださって。その言葉をずっと信じていたのですが、その後一切お声が掛からず(笑)。

──15年以上、音沙汰がなかったと。

そうなんです。だから、なかば諦めかけていたんですけど、今回オリジナル脚本で新作を撮るので出演してもらいたいとうかがって。もう嘘みたいにうれしくて! 脚本を読ませていただくと、矢口監督にしか撮れない世界だし、今これを撮りたいんだという力強さを感じて。これは断ったら、次いつ声が掛かるか分からないし(笑)、断る理由がなにもなかったんです。

矢口史靖監督との再会に「嘘みたいにうれしくて!」と語った深津絵里
矢口史靖監督との再会に「嘘みたいにうれしくて!」と語った深津絵里画像一覧

──『裸足のピクニック』を観て、矢口作品のどこに惹かれたんですか?

なんだろう、なにが起こるか分からないところかな。あと、縛られていない感じがして。その自由さみたいなものが強烈で、うわ、すごいなと思った。その印象がとても強かったんですね。いつか映画でご一緒したいなと思っていたんですけど、だいたいそういうことを口にすると、叶わないことの方が多いので、今まで黙っていました(笑)。

──なるほど。今回、これまでの矢口監督の作品と比べると、かなり趣の異なりますよね。深津さんが脚本を読んで、監督が今撮りたいという思いが伝わってきたと同時に、その毛色の違う感じというのは、どういった印象を受けたんですか?

たぶん、これまで作ってきた作品とはまったく違うなにかを撮りたい、もしくは、まったく違うところに監督は行きたいのかなって感じました。

──これまでの、日常からどんどん離脱していく作風から、今回はむしろ逆に非日常からどうにか日常に戻ってこようとする。深津さんは天然の専業主婦を演じられたわけですが、どういう思いで撮影に挑まれたんですか?

これまでの矢口さんの作品を知っていると、今回の脚本も笑ってしまう場面の連続なんですけど、実際に撮影現場で撮っていると、そういう要素がどんどん無くなっていく。監督もそういう演出を意識的にされていて。たとえば、河原でお父さんが流されて、カツラだけが残って、親子で泣くというシーン。最初、脚本で読んだときはホントに笑ってしまって(笑)。

──過去の矢口作品では、明らかにギャグですよね。

矢口さんの世界観を知っていると笑っちゃうんですけど、実際、そのシーンの撮影になったら、全然おかしくないんです。お父さんの形見のカツラに触れて、なんともいえない感情になる。なんだこれ、とても高度なことをしてるなぁと思っていたら、監督も「このシーンは、観ている方にも同じように痛みを感じて欲しいんです」と。まさかそんな演出を矢口監督からされるとは思っていなかったので(笑)。今回は、そういうことがとても多かったですね。監督は字面だけではない、その先を目指していたと思います。

──フィクションなのか、ノンフィクションなのか。地球上から電気が消えるというとんでもない設定なんですが、少し角度を変えると見え方が変わってきます。

今回はオールロケーションで、ドキュメンタリーのような雰囲気で撮っていました。全部自然光で、お天気次第でテストもできないので、とにかく撮ろうということも多くて。それに戸惑うキャストの姿もそのまま映っていますし。だから、お芝居ということを考えてはいけないんだなと。演技をしてるということがちょっとでも出てくると、この本物の自然のなかでは、ものすごくいびつで、足を引っ張ることになるから、なるべく「演じない」ことを意識しました。

──あえて演じない、と。

そうですね。意識してるか、してないか、のところにいました。監督が目指しているところがとっても高いところにあった気がします。

──そのあたりって、監督とお話しされたりしたんですか。

いえ、あまり細かいことを監督はおっしゃらないんですよね。たまに、「あんまりお母さんぽくしないでください」とか、あと、セリフのテンポのことくらいですね。

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