吉田恵輔「俺はジャニーズでこれをやる」

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鬼才・古谷実の禁断のコミックを森田剛主演で実写映画化した『ヒメアノ〜ル』。メガホンをとるのは、ヒューマンドラマに思わせておいて、実はリアルな痛さをひりひりと忍ばせる、そんな作風でおなじみの吉田恵輔監督だ。映画ファンの間では、最大限の賛辞として「変態的」と評される吉田監督だが、本作ではその表裏が見事に一転! 森田剛の怪演も引き出し、衝撃的なサイコスリラー映画を作り上げた吉田監督を、映画評論家・ミルクマン斉藤が直撃した。

取材・文/ミルクマン斉藤

「胸を張って『変態映画です』と言える」(吉田監督)

──今回は見事に、監督のダークサイドが噴き出た映画ですね(笑)。

どっちかというと、こっちの方が得意というか、こういうダークトーンの映画を自主映画のときから撮り続けてきたんですね。梶井基次郎の『檸檬』をテーマにしたテレビドラマ(2010年の『BUNGO -日本文学シネマ-』)もダークトーンだったので、そのプロデューサーから「そっち系やらないの?」と言われて、僕も「やりたいんだよね~」って。まぁ、ほのぼの系が3発続いてたんで、そろそろいいだろうと(註:『ばしゃ馬さんとビッグマウス』『麦子さんと』『銀の匙 Silver Spoon』の3本)。

──まあ、『ばしゃ馬さんとビッグマウス』(2013年)をほのぼのと言い切るのは抵抗がありますが(笑)、監督の作品はほのぼのの下にドス黒いものが大抵あるじゃないですか。

そう、だからそれをバレないように頑張って潜りこませてたんだけど、今度は胸を張って「変態映画です」と言えるように撮ったわけで(笑)。

──古谷実さんの原作漫画はご存じだったんですか? 僕は映画を観てから読んだんですけれども。

連載中はちょこちょこ読んではいたんですけど、よく判らなかったんですよね。古谷さんの漫画って、毎回出口が判らないから。導入だけ読んでもちょっと間が空くと、何を描こうとしているのか判らなくなる。今ひとつ掴みづらいんだけど、全巻まとめて読み返すと、「あれ、コレこんなに面白かったっけ!?」という。

「胸を張って『変態映画です』と言えるように撮った」と吉田恵輔監督
「胸を張って『変態映画です』と言えるように撮った」と吉田恵輔監督画像一覧

──あの不思議な結末って、古谷さんのなかで最初から決まってたのかどうかかなり疑念があるんですが(笑)。読者はかなり足元をすくわれた感じが残ります。

どうなんでしょうね? 古谷さんがどこまで狙って描いたのかまったく読めないので。これをやりたかったのか、これで終わりでいいや、ってところに落ち着いたのか。なんとなくの方向は最初に決めておいて、後は流れのままに描くタイプの方かもしれないですね。俺も脚本書くとき、違う方向に行っちゃっても「まぁいいか」というタイプなんで。

──そうすると監督の場合、だんだん意地悪な方向になっていく(笑)。

そうですね。なんか苛め足りないなって。そんな感覚なのかも知れないなぁ。

──でも監督は今回、より映画的というか、派手な盛り上がりを設けてますよね。

僕も7本目なんで、流石にこの終わり方はできないと。シュールな映画も好きだけど、やっぱり盛り上がりのある映画が好きなんですよね。(原作とは異なり、森田剛演じる森田と濱田岳演じる岡田を)やはり対峙させたい。でも、対峙したからといって、ありきたりな終わり方をするわけではないので、原作ファンもこれぐらいなら許してくれるんじゃないかなと。原作への愛とリスペクトはもちろん、ファンの代表として映画にしたつもりなので、そんなに外してはいないと僕は思っているんですが。

──吉田監督の場合、原作モノは稀ですもんね。

前回の『銀の匙』(2014年/原作:荒川弘)と今回だけですね。荒川先生の漫画は、台詞の伏線の張り方とか心情の裏切り方とか異常に上手くて繊細で、「うわ、すげぇな!」って惹かれていきましたね。ただ、映画ということでは僕の方がプロですから。あの映画は、作家性を出す作品でもないでしょうし、かといって、漫画に沿いすぎるとただのダイジェストになってしまう。

© 古谷実・講談社/2016「ヒメアノ~ル」製作委員会
© 古谷実・講談社/2016「ヒメアノ~ル」製作委員会画像一覧

──それにしても今回の構成は大胆不敵ですよね。まあ、監督の作品には『机のなかみ』(2007年)や『さんかく』(2010年)のように、途中で主人公が変わったり、目線が変わったりする先例はありましたが、今回は映画の真ん中くらいでタイトルが出て、そこから映画のタッチそのものが激変する。

例えばライターさんやシネフィル(映画通)ら、「わりと映画を観てる」方なら、俺が今までやってきた「映画の壊し方」みたいな部分は気づいてくれるし、触れてくれるんですけどね。でも一般の方には、俺のやろうとしていることってスルーされがちで。なので、それの究極型をやってしまえばさすがに分かるだろう、真ん中にタイトルまでぶっ込んでやればと(笑)。背景に映ってるエキストラの服まで徹底して変えてますからね、もうやり尽くした感はあります。

──後半からサイコパス映画の色彩が強まるとはいえ、セックスと殺しを並列でモンタージュ・・・カットバックするシーンなんてもはやギャグですよね。おそろしく露悪的な(笑)。

原作から脚本に落とし込むとき、最初に書いたシ-ンなんですよ。漫画にはないけれども、登場人物たちの行動が同じ時間に並んで成立するような、(その後の展開に必要な)ある種の縛りを作ったんです。(前半と後半で)コメディとサスペンスをいきなりスイッチするのも、振り幅が肝心で。ムロさんのギャグもやり過ぎると(サスペンスの方向に)戻ってこれなくなるんで、前半はコメディ映画と見せておきながら、ちょっと(不穏な空気を)忍ばせてなければいけない。あと、アクションの常識として、最初の殺戮シーンからだんだん派手になっていきますよね。だけど、普通の映画だったらクライマックスでそれやるでしょ、くらいなのを最初にやって、逆にそれ以上派手にはせず、さらにシュールにしていく、みたいな。

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